組織デザイン
2025年1月19日
大小問わず組織を管理する人間になったら読みたい組織デザインの読書メモ。
新しい組織形態を設計し、その新しい形態の効果を十分に発揮させるためには、少なくとも中核的な役割を担うコア人材に対して、各自の頭の中に残る旧形態との対比で、新形態がどのように違うのかを示す必要がある。 新しい組織形態は旧形態と比較してどのような点で本質的に異なるのか、またその新しい形態の下では、これまでとはどのように異なる仕事の進め方が期待されているのか、という認識が組織の中核メンバーに共有されない限り、組織形態は絵にかいた餅に過ぎない。
先に個人的なまとめを書くが、組織図を考える際は
- 組織全体のアウトプットを考える
- アウトプットが分かれるなら、アウトプットごとに組織を分けても良い(つまり分業)
- 分業をする場合は以下のこともあらかじめ想定しておく
- 分けた組織同士で共有すべき事柄は何か、標準化すべきことは何か
- 分けた組織のアウトプットを共有、統合する必要はあるか
- 組織の深さと幅をどのくらいにするか
- 幹となる部分にはどのような例外が、どのくらい発生しそうか
- どのような調整能力がどのくらい必要で、誰が適しているのか
くらいはあらかじめ考えておくのが良いと思った。
本書でも何度か示されているが、組織をデザインする際は0ベースで考えるのではなく、現在の組織形態をベースにして変えるのが一般的である。
組織の基本形
- 組織メンバーが何を共有し、何を重視して仕事をしていくことになるのかを考える
- 機能を集約することで得られるメリット(コストダウンや付加価値の向上)が必要なのか、個々の製品・市場への柔軟で迅速な適応によって得られる効果が必要なのか
機能別組織
研究開発をする部門、生産する部門、販売する部門のように機能ごとに組織を分けるのが「機能別組織」であり、それぞれの部門の中に各製品ごとのユニットがあるようなイメージ。
個々の組織メンバーは同じ専門の人間と対話しながら、自分たちの専門を通じて会社に貢献することを最大のテーマとして仕事を進めていくことになる。
特徴
- 機能別に分けられているため、各部門は単独では存続しえない(研究開発をしても生産、販売する機能がないとビジネスは成り立たない)
事業部制組織
生産設備の共有や開発スタッフの共有といった観点よりも、個々の製品・市場への適応が優先される。
マトリクス組織
分業
とくに以下の2文が刺さった。作業を効率化することだけを考えて分けると失敗するリスクが高い。
組織内で分業を進め、既存の部署を分けて新しい複数の部署を作るということは、同時に組織内に新しい「種族」を生み出すという覚悟を持って臨まなければならない。 … 分業は単に仕事を分けるだけでなく、人々の心まで分けてしまう。
分業はいくつかの種類に分けられる。
- シフト制:やることは一緒だけどやる時間を分ける
- 並行分業:複数人で同じことを並行してやる
- 直列型・機能別分業:依存関係のあるタスクを別々に分担してやる(タスクBはタスクAが終わらないと着手できない)
- 並列型・機能別分業:別々のタスクを同時並行してやる(最終的にはすべてのタスクが終わる必要があるが、タスクAとタスクBは依存関係にない)
機能別組織は「直列型・機能別分業」を基本原理として、事業部制は並行分業を基本原理とする。
分けるところも大事だが、分けたユニットごとに何を共有すべきかも同時に考えるのが大事な気がする。
各分業タイプごとに以下のような特徴が変わってくる。
- 生産物の計算は合計か、最小値か
- 歩留まりの計算は平均か、最小値か
- 各ユニットが単一障害点となりうるか
- インプット、アウトプットのタイミングを揃えるなど、時間的な連動が必要か
- 作業者間は協働関係になりうるか、競争関係になりうるか
並行分業の特徴
- 同じタスクを並行分業する場合、どこかのユニットで障害が起きても大きな問題にはなりにくい(単一障害点が生まれにくい)
- タスクに必要な資源、インプット側の工程、アウトプット側の工程は同じになるので、共通部分の効率化が全体に影響しやすい
- 分業ユニットが増えすぎると、共有しているはずの部分が逆に混乱を招き、単位当たりのコストが逆に増えていくこともある(短期平均費用曲線)
Webサイトにおいて言えば、大量のページを実装する作業を複数人で分担するような分業の仕方。
機能別分業の特徴
本書では、
全体に対して果たす機能に応じてタスクを分割すること
を機能別分業と呼んでいる。並行分業の場合はそれぞれのタスクを最終的に足し算すれば全体の総量が出来上がるが、機能別分業の場合はどこかで機能的に統合しなければ全体が出来上がらない、という特徴がある。
Webサイトにおいて言えば、デザイン、コーディング、バックエンド、インフラなどの機能ごとに分けるような分業の仕方。
組織においては並行分業と機能別分業のどちらか一方があるわけではなく、作業やフェーズ、組織のケーパビリティによってどこをどのように分業するかを考える必要がある。
経済的スタッフィング
スキルAとスキルBが両方必要なタスクがあったとして、分業をしない場合はスキルAとスキルB両方を備えている人でないとタスクを担当することはできない。多くのスキルを兼ね備えている人は稀少であり、採用にかかるコストは相対的に増えることが予想される。
スキルAが必要なタスクと、スキルBが必要なタスクに分けたうえで、スキルAを持っている人とスキルBを持っている人が分業することで、経済的に効率がいい配置ができる可能性がある。
必要なスキルで分ける以外にも、タスクの難易度で分業するなど、いろいろな分け方があり、適材適所に人を配置させることができ、雇用創出にもつながるが、適材適所にこだわりすぎると成長を阻害してしまうリスクもある。
習熟の速度
スキルAとスキルBが両方必要なタスクをこなすには、スキルAとスキルBを両方習熟する必要がある。
スキルAが必要なタスクと、スキルBが必要なタスクに分け、分業することで、習熟する範囲を絞りフォーカスすることができる。スキルによっては範囲を絞る(専門性を高める)ことで到達できる最大値すらもより高度化する可能性を秘めている。
学習曲線はスキルによって変わる可能性があり、習熟するまでに時間がかからないタスクはアルバイトなど一時的に雇用されている人に任せるといったスタッフィングも可能になる。
スキルを絞ることでそれぞれの向き不向きに早い段階で気づけるというのもメリットかもしれない。
機械化、自動化
誰にでも分かるように説明できるタスクは機械でも扱えるようになることが多い。
そのため複雑に見える作業を複雑な部分と単純な部分に分けることができれば、機械による自動化が望める。
垂直分業
水平分業に対して垂直分業というのは簡単に言えば、考えるひとと手を動かす人に分けたり、長期的な戦略を考える人と短期的な現場適応を考える人に分けたりすることを言う。
分業のデメリット
分業には専門性を高めて学習コストを抑え、効率的に作業を行うなどの利点がある一方でデメリットもある。
働く人の意欲低下
- 自分がやっているタスクの意味が理解できず無気力、無責任な雰囲気が蔓延する
- 思考余地が少なく、作業者による判断の余地が少なくなり、意欲が低下する
- タスクから学べることが少なくなり、長期的に見ると無駄が多くなる
これらを解決するには、
- 垂直、水平方向それぞれの分業の程度を緩和を検討する
- ジョブローテーションを行う
- 短期雇用を活用する
3点目は短期的な解決策であり、社会全体で見ると根本の課題は解決していない。
調整の難易度が上がる
- それぞれに異なる目標を追求するがゆえに利害が一致せず対立する可能性がある
- 時間軸が違う(たとえば生産部門と研究部門では成果をだすためにかかる時間が違う)ことによるコミュニケーション障害
調整と統合
本来一つだったものを分ければ当然分けたもの同士の隙間を埋めるための調整が必要になり、最終的には統合をする必要も出てくる。
調整と統合をうまく進めるためのポイントは以下の5つ。
- 標準化
- 作業ごとのインプット、アウトプットのインターフェスを決めておく
- 作業者ごとにアウトプットの質が変わらないような仕組みを考える
- ただし、例外には弱いので、例外に対応するためにはヒエラルキー(による判断や承認のフローなど)が必要になってくる
- ヒエラルキー(階層制)
- 環境マネジメント - 環境への能動的働きかけによる調整の必要性削減
- スラック資源活用による組織内相互依存関係の緩和
- 水平関係の設定
標準化
標準化といってもさまざまな標準化があるが、組織の活動を「投入(インプット)」「処理(スループット)」「産出(アウトプット)」の3つに分けて考える。
スループットが一番分かりやすく、いわゆるプロセスの標準化がこれにあたる。いつ、だれが、なにを、どうする、ということを取り決めておけば、人によるブレが少なくなる。
ブレをできる限り少なくするにはプロセスを詳細にするか、理解度のばらつきを減らすための努力が必要になる。
同じプログラムを違わず繰り返せる前提でのみ効果を発揮するものであり、例外的な要件が発生したり、途中で誰かがプログラムから外れてしまうと成り立たなくなる。
アウトプットの標準化とは、処理を問わず最終的に出来上がるものを規定することをいう。
プロセスを守れば、ある程度同じものができるはずだが、必ずしもそのプロセスが最短経路ではない場合もあるので、最終地点だけ規定しておくほうが効率化につながる場合もある。
インプットの標準化とは、人やもの、使用するツールなどを標準化することをいう。
たとえば、この作業は必ず同じ人や同じ部署に頼むとか、スキルレベルを揃えるとか、効率化するためのロボットを作っておくとかそういうイメージ。
いずれの標準化も必ずしも自分たちで用意する必要はなく、外注したりするなどして外部をつかって標準化することも考えられる。
ヒエラルキーのデザイン
個人的にこの本において一番見どころだと思ったのがこのヒエラルキーについての章だった。
ヒエラルキーというと、これまでは昇格、上下関係というイメージしかなかったが、この本では調整のための仕組みの1つであると書かれている。
標準化は効率よく品質を保つために重要なステップだが、例外に弱い。例外が発生した場合には個々人で判断するのではなく、組織で判断する必要が出てくるが、そのときにヒエラルキーというものが必要になる。考えてみれば当たり前だ。
標準化は事前の調整手段で、ヒエラルキーは事後(なにかが起こった後)の調整手段、という分け方になる。
組織の階層が深いと、例外が起きた時のエスカレーションのステップが多くなるため、調整には時間がかかる。
組織で起こりうる例外の数や、例外の難易度によって、組織図を変えたり、だれがどこまで判断していいのかを決めておくことが求められる。
また、分業が適切でない場合もエスカレーションは非効率になる。例外を判断する人は、すべてのインプットを受けた上で判断する必要があるので、複数に分かれた枝葉の部分で例外が発生した場合、それぞれの葉から順にエスカレーションを行い、合流する場所にいる人のみが適切な判断を下すことができる。
この枝葉が合流する部分が社長だったりすると、エスカレーションステップは増えるし、社長がそんなことに時間を割くのは正直無駄だと思う。というか忙しすぎて調整に時間を要するのは明らかだ。
ヒエラルキーは事後的な調整手段だということを踏まえて、組織図を考える必要がある。
※ 間に横軸を刺して、一番上までエスカレーションしなくて済むような組織にすることも考えられる
管理者の調整能力
ヒエラルキーが調整手段だと考えると、枝葉の幹に当たる人(いわゆるリーダーやマネージャー)には調整能力が求められる。
多くの例外を捌く力や、複雑な例外を豊富な知識で解く力が求められる。
しかし、すべての例外をマネージャーがすべて解いていたのでは、調整能力が組織に浸透していかないので、
- マネージャーが問題提起をする
- スタッフが情報収集、分析をする
- マネージャとスタッフで選択肢を考える
- マネージャーが決断する
というようにしていくのが望ましい。
知らなかった言葉
歩留まり(ぶどまり)
歩留まりとは?意味や計算方法・改善方法をわかりやすく解説 | NECソリューションイノベータより
歩留まり(ぶどまり)とは「投入した原料や素材に対する完成品の割合」や「生産数における良品の割合」などを意味する言葉です。 … 【投入原料に対する完成品の割合】 歩留まり率(%) = 完成品数 ÷ 投入原料数 × 100 【生産数における良品の割合】 歩留まり率(%) = 良品数 ÷ 完成品数 × 100 = 良品率(%) ※生産数における良品の割合は、一般的に良品率としても認識されています。
段取り替え
規模の経済(Economies of scale)
機能別分業の高度化は規模の経済を生み出すことにつながるらしい。
設備投資をして購入した機械で1個の製品しか作らなければ、その製品を作るのにかかった費用は機械の価格が丸ごと上乗せされるようなイメージになるが、製品を大量に作れば、機械の価格を個数で割ることができるので、1個当たりにかかる費用がどんどん小さくなっていく、のようなことを規模の経済と呼ぶらしい。一定の個数を作ったところで、機械が壊れたりすると、費用が一時的に上がったりする。
規模の経済とは?具体例(お菓子工場)で簡単にわかりやすく解説【初心者向け】
計画のグレシャムの法則
「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則から
組織における計画(プラニング)には、いい計画(“良貨”に相当)と悪い計画(“悪貨”に相当)があり、悪い計画がいい計画を押しのけてしまう現象
のことを計画のグレシャムの法則と呼んでいるらしい。
本書では、ルーチンワークはノンルーチンワークを駆逐する、というような意味で使っており、長期的な視点で考えるべき重要なタスクよりも目先のタスクが優先されがちであることが指摘されていた。
これを垂直分業で、ルーチンワークになりえないユニットと、そのユニットから受けた指示をルーチンワーク化していくユニットに分けることで改善していこう、ということらしい。
外集団均質化効果
外集団同質性効果 | 他者・自己に関する認知バイアス | 錯思コレクション100より、
人は、自分が所属する内集団のメンバーに対しては多様性があるように認知しますが、自分が所属していない外集団のメンバーに対しては、メンバー同士が互いに似ているように認知します。内集団の多様性を外集団よりも高く認識し、外集団をステレオタイプ化して均質な集団だと認識する現象のことを外集団均質性効果と呼びます。
本書では
人間は自分が属している集団に関しては細かいレベルの情報を蓄積し、そうではない集団に関しては「十把一絡げ」的に情報を収集・蓄積していく傾向があることが原因
であり、自分以外の集団を「みんな同じ」と思い込ませてしまう。このような考えに陥ると、個人同士や組織同士の調整が自然発生する可能性を下げてしまうことにつながる。