Web制作会社として生き残るために考えていること
2022年11月27日
なんの調査もず直感だけで書いている。そして当然ながら実情は『企業による』という当たり前の結論があるという前提。
鵜呑みにするわけではないが2013年に書かれたアメリカでWeb制作会社が存在出来ない5つの理由という記事にある通りであり、すこしずつ日本にも同じような空気を感じるようになってきた。
そう感じる理由はコロナ以降、オンラインでの発信が増え、自然と情報が目に入るようになったというのもあるんだけど、スタートアップもそれなりに増えてきたりして「弊社でのエンジニアリングの取り組み」を発信する企業が増えているというのが背景の一つとしてあると思う。
いちWeb制作会社(以降、制作会社はWeb制作会社として書く)で働いている自分から見ると、羨ましいと思う一方で焦りもかなりある。制作会社の場合、自分たちのサイトを作っているわけでもないので、自分達の裁量で進められる範囲というのが比較的限られてくる。
作ったものを一般に実績として公開できない、というのもその1つで、事業会社の人たちが勉強会で発信しているような具体的な内容は許可なしには話せない。いろいろな情報を隠しながら、できるだけ抽象化しないといけない。
客観的にみて事業会社のほうが圧倒的に情報量が多くてキラキラして見えるし、制作会社の存在感が薄れてきているという危機感すらある。このままでは人材が獲得できず組織の体力は落ちる一方なんじゃないだろうか。
一方で「存在感が薄れてきている」のは果たして情報量だけの問題なのか?そもそも制作会社はこれからも求められる存在なんだろうか?とも思う。
米国では、Webサイトやスマホアプリなどは内製することが多い、多くの会社がデザイン組織、開発組織を抱えていて、外に委託することはほとんどない状況だとという話をよく聞く。分からないけど多分Webを舞台とした事業会社じゃなくてもそうなんだと思う。だから制作会社が存在できない。
日本だと、まぁWebサービスを1事業として運営している会社であれば内製するのは当然だと思うけど、部分的にリソースを外部に求めることはまだある、と思う。しかし時間の問題かもしれない。
なぜ内製するのか
内製する企業が増えてきているその背景、理由はいくつかあるだろうが「LeanとDevOpsの科学」で言われていることから拝借すれば、
- リードタイム
- デプロイ頻度
- MTTR(Mean Time To Repair | Mean Time To Recovery)
- 変更失敗率
の4つが組織のパフォーマンスに因果関係があるということ。相関ではなく因果。これは、科学的に証明されているらしい。ここでいう組織のパフォーマンスというのは、収益性であり、市場占有率であり、生産性を示す。
リードタイムは案件スタートから市場公開までにかかる時間、MTTRは修正にかかる時間を示しており、いずれもスピードを示す指標である。
スピードが上がればデプロイ頻度も自然と高くなるだろうし、変更失敗率は一見すると「品質」に関する指標のようにも思えるが、失敗しないことはスピードを下げないために必要なことだと考えるとスピードに関する指標とも言える。
私はスピードを上げるには効率のよい仕組みが必要であり、その仕組みを作ったり適切に運用していくには密なコミュニケーションが必要であり、一番重要視すべきポイントだと思っている。
「おれが考えた最強の○○」はその人にとって最強なだけであって、周りの人は最強なんて求めてないから使いやすいやつ作ってよ、と思っていることもある。
さらに言えばWebで儲けるには、運用でどれだけ効率よく利益をあげられるかが一番の肝であり、運用を成功させるためには、運用しやすい仕組みが必要となる。
じゃぁ何が運用しやすいのかと言えば、実際にだれがどのように運用していくのかによってバラバラなので、結局ここでもコミュニケーションが必要だ。
社内と社外のコミュニケーション、どちらが効率よく適切かは直感的に分かるだろう。内製が増えてきているというのは、結局はそういうことなんじゃないかなと思う。人材派遣が1つの仕事として成立しているのもそういう背景がある気がする。
制作会社として何を強みにするのか
速度の面ではやっぱり内製には敵わないと思う。リモートによって物理的な距離というギャップは小さくなったものの、会社が別であるというのは超えられない壁があるように感じる。会社はお互いにお金で回っているので当たり前だ。
では、制作会社として強みにできることはなんなんだろうか。それが「経験」なんだろうと思う。
まず、相手が一社ではないことは大きなアドバンテージになる。
内製でなにか新しいことを始めるとしたら、おそらく技術検証から始めることになる。そしてそれがもし失敗に終われば「無駄」として扱われることもあるんじゃないだろうか。もちろん実際は無駄ではないが、結果を出せなければ評価につながらないんだろうとは思う。
一方で制作会社は多くの会社を相手にしている。競合に追随してうちもあれをやろう!という会社は結構多い印象があるので、ピンポイントでパーフェクトな提案はできなくても他社での経験を部分的に活かすことはできると思う。
実際、多くのクライアントが問い合わせの際に「実績」を気にするのは、それを期待してのことなんだろうなぁとも思う。
そして、経験は丁寧に扱えば「品質」につながる。速度も1つの品質ではあるが、ここでいう品質はソフトウェア製品品質における「機能適合性」や「使用性」に位置するものをイメージしている。
1度した失敗を2度と起こさなければそれは完全性や正確性につながるし、他社での成功例を活かしてベストプラクティス的な設計をすれば、それはユーザビリティやアクセシビリティの向上につながる。
とはいえ制作会社自体が大きくなると、経験を共有すること自体が難しくなる。横のつながりというものがないと共有することもできない。事業部や部署による偏りも出てくる。
1社で得ることが難しい経験を持ちながら、社内、社外のコミュニケーションを疎かにしないことが制作会社の強みを活かす上でまず必要なことなんだと思う。
ここまでなんか当たり前のこと書いてるなぁ、とおもったけど、実際意識して働くことはやっぱり難しい。横の繋がりを大事にしているか、一つのプロジェクトを点で捉えていないかに気をつけて仕事したい。
もっと仲良くしたい
いろいろ書いたけど、それを差し置いても制作会社の存在感が薄れてきているというのは事実な気がする。隣の芝生は青いとはよく言うが、発信の少ない制作会社の芝生は周りには見えてすらいないのかもしれない。
ビジネスドメインが重なっていなければ協力し合うこともできるんだろうけど、いわゆる競合同士の制作会社ではなかなかそうはいかないのだろうか。
よく社内の資産(ツールやナレッジ)を公開することに二の足を踏むことあるけど、制作会社としての力が発揮されるのは知識をどう活かすというところで、実践力のない会社に知識を共有したとしてもなんの脅威にもならないと思う。
逆に実践力のある会社は他社が情報を共有しなくたって、いずれはそこにたどり着く。だから情報を公開することにはおおきなリスクにはなり得ない。今の時代はむしろ、発信しないことの方がリスクと感じてしまう。
べつにその場でクライアントの取り合いをするわけでもないし、みんなで共有した経験を自分の会社に持ち帰って、残業減らして業界全体をホワイトにしよう!とか、Webをもっとよくしたい!とか、そういうのでいいんじゃないの。
かくいう自分も考えているだけで動いてないので、そろそろ動かないとなぁ。