EOF2019
2019年11月1日
EOF (Engineering Organization Festival) 2019に参加したメモ。
自分は全然マネージャーでもなんでもないけど、会社のエンジニア組織に大きな課題を感じていて、何か参考にできることがあればいいなぁという思いで参加した。
登壇されている方は、当たり前かもしれないけど、みなさん目線が違って視座の高さを変えて考えるにはよいきっかけになったなぁと思う。 前まではとにかく視座を高く、遠くを見ることが大事だと思っていたけど、最近は現場を見つつ、遠くを見れるように視座を変えて考えることを意識するようになった。
まずは感じている課題というものを言語化してみよう。
- 案件で疲弊しすぎて学習したり考えたりする余裕がなくなっている
- 自分とできる人との間に一線を引いてしまっている
- 他の会社との関わりが一切なく閉鎖的
- トップダウンで降りてきたものを特に疑問に思うことなく受け入れてしまっている
- 中堅以上が忙しすぎて組織の解決に踏み出せない
- チーム間やオフィス間など横の繋がりがない
自分はこのほとんどが組織が作り上げた課題であり、正直個人の力量はほとんど関係ないと思っている。(多少はあるけど)そして多分うちの会社特有の課題ではなくて、どこの会社でも「あるある」と感じる話だと思う。思いたい。
さて、解決の糸口は見つかるのだろうか。
質とスピード - t_wadaさん
スライドはこちら。
デブサミのときに初めて聴講し、一瞬でファンになった。今回は初公開の内容らしい。
まず前段としてスケジュールに対して要件が多い場合、
- スコープを絞る
- 人を増やす
- スケジュールを伸ばす
- 品質を犠牲にしてスピード優先で
のいずれかを選ぶ必要があるとした場合、4つ目の「質を犠牲にすること」が選ばれることが往往にしてある。だが果たして、質を犠牲にすればスピードは上がるのだろうか?質とスピードはトレードオフなのか?という問い。
結論としては、品質(ここではメンテナビリティ)を犠牲にすると、短期的にはスピードは上がるが、中長期的に見ると犠牲にした部分がネックとなり、余計に時間がかかるようになってしまう。余計に時間がかかると学びのループを回す回数がどんどん減ってしまい結果として全体の品質が下がり始めてしまう。 さらに、短期的が中長期的に変わるタイミングは私たちが思っているよりずっと早い。
多分開発者は内部品質がさがると外部品質も下がることを直感的に感じていると思う。だから内部品質を意図的に下げれば自ずと外部品質も下がってしまう。無理やり外部品質だけを良くしようとして上部だけ取り繕ってもどこかでボロがでてしまう。そういう話に近いかなと感じた。
良い設計がされている飛行機はよく飛ぶが、よく飛ぶ飛行機だからといって良い設計がされているかどうかはわからないというのは今も変わってない。
調べてみたら質の定義については「ソフトウェア技術者協会(SEA)のMonthly Newsletter(1987年10月の資料)」でも議論されていて非常に興味深かった。
途中で「技術力以上の品質を出すことはできないので、時間をかけたらかけた分品質があがるかというと微妙」という話がされていて、確かにそうだなぁと思った。だからこそ、質とスピードの2つはトレードオフの関係ではない。
クライアントワーク企業でもできるエンジニアリング組織のつくり方 - エーピーコミュニケーションズ 永江さん
自分もクライアントワーク企業で働いているので興味深く、共感しながら聞くことができた。 不確実性、自己組織化など、エンジニアリング組織論への招待からけっこう引用されていたので、もう一度読み返そう。
社員が耐えられる範囲内で適切にストレスを与える、という話はなるほどなと思った。
何か会社全体で施策を行なったり、ルールを追加すると、社員はストレスがたまる。ストレスが爆発しそうなったら施策をやめるとかではなくて、社員が耐えられる範囲内で適切にストレスを与え続けるのが大事。 おそらく社員が成長し始めれば、社員のストレスグラフはだんだん下がり始めるということなんだと思う。そのタイミングで新たなストレスを与える。そうやってみんな成長していくんだと思う。
ストレスが溜まりすぎると、自分と他とを切り離し始める(自分とは関係ないと思う)らしい。その対策として、影響力のある人が頑張るという方法がある。あの人がやっているなら自分も頑張らなければと。これはソーシャルグラフに近い話だと思う。
逆に自分がマイノリティだと感じ始めることができれば、自走し始めるかもしれないなと思った。ただ、上の人間は自走し始めた人が完走できるようにサポートしなければいけない。
マジョリティを生み出すためには社内でどんどん実績を作るのが大事。これをやれと言われても、実績がなければ踏み出せないのが自己組織化されていない会社の弱点。だからとにかく実績と経験を積むのが第一歩なんだ。
エンジニア採用どうしてる? - Findy 佐藤さん、Classi 佐々木さん、 Repro 三木さん
やっぱり認知施策大事ね。応募者だけでなくエージェントともいい関係性を築いて、エージェントのイベントにどんどんスポンサードして、副次的な認知を得るというのはさすがと思った。
うちの会社は
- リファラル採用を行うタイミングの見極め
- リファラルする人の教育
- リファラル後のケア
- 入社前のケア(入社する前から知り合いがいた方が精神的には入りやすい)
- キャンディテートサーベイ
- ダイレクトリクルーティング
- 効果測定
をできているのかなぁと疑問に思った。採用に問いかけてみよう。
学習する組織のつくりかた - 古川さん
古川さんは「正しいものを正しく作ること」を大事にしているらしい。正しいもの、そして正しく作ることとは、
- validation
- verification
である。validationはvalueから来ていて、それは価値があるということ。verificationはveryからきていて、まさしく、あるべき姿であること。 つまり価値があるものをあるべき姿で作ることが大事である。
本題の学習する組織をどうやって作るかという話は、とにかく息を吐かせるという話をされていてやっぱりアウトプットさせるに限るなぁと改めて思った。
リクルートでは、社内ブログを書いたり、社内のサービスをお題にしてISUCONやっていたりするらしい。「リクルートのサービスがよくなれば、日本のWebの数%がよくなる」という考え方は自分も持たないと、と思った。
そして、目的は正しいものを正しく作ることなので、自己組織化された、学習する組織ができたことはスタートであり、そこから価値あるものを作り始めることが大事なんだ。
EM.FM 生配信
アドリブであそこまで深い話ができるのはやっぱり常にそういうことを考えているからなんだろうなぁと、格の違いを感じた。自分もいつまでも聴講側に座っているわけにはいかないよな。
途中EMに向いているのはどういう人かという話があって、「にげない」こととおっしゃていた。上からはとにかく不確実性のかたまりのようなものが落ちてきて、それをそのまま受け流したくなるけどそこで踏ん張れることが大事なんだ。
最近自分の課題である「任せる」と「丸投げ」 に近いものを感じた。自分は逃げていた。
でも、そのあとの「ツッコマビリティ」(まわりからの突っ込まれやすさ)は意識的にできていたと思う。これは意識的かどうか(あえて隙をつくっているか、ただテキトーなだけか)で大きな違いがあるので、これからも注意したいと思う。
まとめ
いくつかメモしたけどまとめづらいセッションがあって飛ばしちゃったけど、全体を通してセッション間で繋がっている話がけっこうあって、とても面白いかった。無料でこのレベルの話が聞けるのはすごいと思う。
いつかCTO協会のようなものに所属して、日本のテクノロジーを牽引できるような技術者になろうと思えた。そんなイベントでした。
冒頭であげた課題に向けて自分がまずできることは、どんどん外に出て実績を作り社内にいろいろな文化を持ち帰ることかなぁと思う。
そして共感してくれる仲間を増やしてボトムアップで自発的な文化が作れればもっといい組織になるかなぁと思う。先は長いなぁ。
Qiitaにイベントのスライドまとめをしている人がいらっしゃったので、あとで見返そう。